太郎雑記

つれづれなるままに、よろずのことについて語ります

果てしないカステラの旅 第3回 森長の半熟生カステラ

創業 寛政5年 おこしの老舗が生み出したカステラ

長崎カステラについて勝手気ままに書いているシリーズも早や3回目。

いい加減に福砂屋とか文明堂のことを書かんかい!とお叱りを受けそうですが、もう少々お待ちを...🙇

エビフライ定食が出てきたら最後まで海老を取っておく性分なのです...。

そんな感じなので、今回もまた御三家以外のカステラをご紹介します笑。

「森長」さん!

“もりなが”ではありません、“もりちょう”。

kashuen-moricho.co.jp

 

本店は、長崎市のお隣。干拓で有名になった諫早市にあります。

諫早。難読ですが、いさはやと読みます。

体操の内村航平クンの出身地と言ったら、「あー」と仰る方も多いでしょう。

有明海に面し、長崎本線大村線島原鉄道の3つのラインを結ぶ、交通の要衝です。九州では柳川と並び、鰻料理の本場としても知られていますね。

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上の写真は、諫早市の中心部にある「北御門(きたみかど)」さんというウナギ専門店で撮影したものです。

赤くてズシリと重い陶器を開けると、甘辛い出汁を吸った、柔らかい鰻が登場します。脂も乗って、絶品のお味です。

鰻って、種類や調理方法によっては骨が舌に刺さったり、実がゴムマリみたいに固かったり、結構NGなものに引っかかることもあるのですが(投資が大きいだけに痛い!)、北御門さんでそういう思いをすることはまずありえません。

本当にいつ食べに行っても、安定の美味しさなのです。

 

うなぎ割烹 北御門
うなぎ割烹 北御門
ジャンル:和食・割烹・うなぎ料理
アクセス:島原鉄道島原鉄道線本諫早駅 徒歩8分
住所:〒854-0011 長崎県諫早市八天町4-3(地図
周辺のお店のネット予約:
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情報掲載日:2018年12月2日

 

そしてその北御門さんから歩いて数分のところに、かなり年季の入った建物が2軒、立っています。

ひとつが杉谷本舗(すぎたにほんぽ)。そしてもう一つが森長です。

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どちらも諫早市を代表するおこしメーカー。

杉谷さんが1811年(文化8年)創業。森長さんが1793年(寛政5年)創業と言いますから、大したものです。

ご存知の通り、長崎県は坂の多い地形として知られます。長崎だけではなく、佐世保も同様です。

となると、平野部の諫早市では米作が盛んになります。現在でも「にこまる」という品種が広く流通していますが、諫早は江戸時代から有名なコメどころでした。

同時に、諫早は「シュガーロード」の宿場町でしたので、砂糖と余剰米がいつの間にかコラボレーションし、おこしづくりが始まったものと思われます。

 

今でこそ見かけにくくなりましたが、昭和の居間には、たいがい菓子箱におこしが入っていました。おばあちゃんも孫も、お茶と一緒におこしを口にしていたものです。

それが、チョコレートやコンビニスイーツなど、多種多様な美味しいお菓子が安価で手に入るようになった現代、もはや素朴なおこしは振り向かれなくなった、と言ってもよいかもしれません。

そんな苦境にあって、伝統を守り、淡々とおこしを作り続ける杉谷さんも森長さんも素晴らしいと思います。

ただし、両者とも今日では別の商品に活路を見出しています。そう、カステラ。


 

特に森長さんのほう、変わっていますよね。

実はこれぞ森長さんの超ヒット商品、半熟生カステラなのです。

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箱はプラモが入りそうなくらい大きめのサイズです。デザインも貰ったら嬉しい感じになっています。

普通のカステラと違いますから、保存や食べ方もやや慎重に。説明書きにしっかり目を通しておきましょう。

ちなみに今回購入したのはプレーンタイプ。

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箱から取り出すと、結構大きい(゚д゚)!

特に切れ目も入っていませんから、デコレーションケーキのように丁寧にナイフを入れていきます。予想以上に厚みがありますよ。

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型崩れ防止の紙を取り外し、ピースを取り外したら、上の写真の感じ。

何となく層に分かれているのが分かりますか?

食べてみたら本当に不思議な感じがするのですが、従来のカステラみたいな食感、半熟たまご焼きのような食感、そしてハードに焼きあがった食感。3層くらいあります。

岩永梅寿軒さんの章でも書きましたが、これはポルトガルから最初に伝わったカステラの元祖、パンデローにヒントを得た焼き方なのだそうです。ひとくち食べてみて、ちょっとカステラとは結び付かないような印象ですが、パンデローと言われれば納得です。

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グルメの写真としてはどうかと思いましたが、より分かりやすいようにストレートに外側を崩してみました。この半熟感、すごいでしょ?

肝心のお味ですが、福砂屋さんのカステラみたいなしっとり生地を期待されると、「?」という感じになるかもしれません。まるでこの世に初めて出てきたお菓子という感覚で食べると、あっさりとした甘さに濃厚な卵の風味が絡み、それでいて素朴な風味が食欲をそそります。戦国武将が舌鼓を打った「パンデロー」もこんな感じだったのかなあ、と感慨にふけりますね。

ところでこの半熟生カステラ。冷凍庫から冷蔵庫に移してやんわり解凍させる食べ方ですから、ちょっとタイミングにコツが要ります。私はあまり溶かさないで、固めの状態で食べるのが好きですが、わりと普通のカステラに近い柔らかさで食べるのが良いという方もいらっしゃいます。こういうところも、食べる楽しみがあってよいですね。

 

なお半熟生カステラ、通販でもお買い求め頂けますし、JR長崎併設・アミュプラザ長崎1階お土産コーナーに森長さんの店舗があります。

しかし、もし機会がありましたら、趣のある諫早本店に足を運ばれるのもよいかもしれません。杉谷さんや北御門さんのウナギもあわせてどうぞ。