果てしないカステラの旅 第6回 関西カステラの代表格 銀装
大阪の老舗カステラメーカーをごぞんじですか?
これまで私はカステラの紹介記事をダラダラと綴ってきましたが、それらはすべて長崎カステラを扱ったものでした。
カステラと言えば長崎。長崎と言えばカステラ。
ざっくり言って、九州では誰もが当たり前のようにそう思っています。
しかし、全国にはそんなことを言ってみた日にはぼろくそに怒られる地域もあります。
それは、意外ではありますが、大阪。
そう、大阪には独自のカステラ文化があるのです。
まあ、カステラなんてちょっとした設備投資をすればどうにか作ることはできますし、全国どこででも、スーパーの菓子売り場には地元のメーカーが焼いた個包装のカステラがごまんとあります。
ですから、大阪発のカステラがあっても特段珍しいことではないのですが、ただそれが地域ブランドとして、広範囲のデパートに出店し、贈答品にも選ばれているとなれば、話は変わってきます。
そう、そのカステラは、あくまで関西エリア限定ですが、長崎で言うところの福砂屋さんや文明堂さん並みのステータスを確立しているのです。
カステラメーカーの名前は、銀装(ぎんそう)。
1952(昭和27)年8月、浪花の商いの中心地・心斎橋で産声をあげた銀装は、翌53年、大阪南部の高石市に大規模なカステラ工場を開設。それまで日持ちの短かったカステラの弱点を克服するため、密封包装・熱殺菌の技術、いわゆる『紙の缶詰』の技術開発に成功し、一躍、世間の注目を浴びる企業になります。
この銀装の技術は、自社一社の成功にとどまらず、それまで日持ちしないのが当たり前であったカステラの賞味期限を飛躍的に伸ばし、高嶺の花から庶民の食べ物として一気に普及させるきっかけを作りました。
また現在、カステラは当たり前のようにカットされていますが、このカット販売に最初に取り組んだのも銀装。歴史や伝統ではとても長崎カステラにはかないませんが、庶民のお菓子「カステラ」に育てなおした会社として、銀装の功績はまことに大と言って良いでしょう。
なお、銀装のカステラは美しいグリーンの青箱、上品なピンクの赤箱の2種類があります。それらは「CASTE」というブランド名を持ち、新鮮な卵、高純度の白双目糖、特等小麦粉、蜂蜜、もち米水飴など。安心、安全にこだわった厳選した材料を使っています。
青箱はきめ細かで上品な甘み。赤箱は甘さ控えめでまろやかな口当たりが特徴です。
でも、ちょっとご注意がありまして、長崎カステラを日頃から召し上がっている方は、銀装は別のスイーツだと思って愉しんでください。
(´・ω`・)エッ?(´・ω`・)エッ?(´・ω`・)エッ?(´・ω`・)エッ?(´・ω`・)エッ?(´・ω`・)エッ?
別に銀装さんを侮辱しているわけではありませんよ。というのは、銀装は大阪の庶民文化の中で徹底して長崎カステラとの差別化を図ってきた会社で、製法やポリシーが長崎カステラとはかなり違います。
長崎のじゅわっとして肉厚、ザラメをふんだんに盛り込んだカステラと同一視した場合、それは失望に変わってしまいます。
それよりも、大阪の歴史あるスイーツ。モダンで洗練された庶民のおやつとして召し上がった場合、それはそれは幸せな時間を過ごすことができるでしょう。夏なんてひんやり冷やして、紅茶やアイスコーヒーと頂くと、本当に美味しいですよ。
ちなみに、窯出しや切れ端も購入できる銀装の工場が、大阪府高石市の伽羅橋駅前(南海高師浜線)を降りてすぐのところにあります。最近、駅前周辺はすっかり寂れてしましましたが、明治時代から要人などが屋敷を構える高級住宅街だったこともあり、どことなく街に気品が漂います。
歴史ある難読駅ですが駅前は・・南海高師浜線 伽羅橋駅 Nankai TakashinohamaLine KyarabashiStation
工場の目の前に、カフェラサールという喫茶店がありまして、そこでは銀装カステラ、焼き菓子、プリン、贈答品はもちろんのこと、生産の過程で発生する切れ端がとてもお安く買い求められます。
当然ですが喫茶店ですので、銀装特製カレーや窯出しカステラを美味しいコーヒーと頂くことができますので、ぜひ一度訪れてみてください。