太郎雑記

つれづれなるままに、よろずのことについて語ります

伝統の職人技! 和菓子もさすがの松翁軒

歴史が生んだ 松翁軒 和菓子調進所

前回ご紹介した、長崎カステラ御三家の一つ、松翁軒(しょうおうけん)。

このカステラの超老舗が、和菓子屋さんをやっていることをご存知ですか?

今回は松翁軒さんの生命とも言うべきカステラが全く置かれていない不思議なお店、「松翁軒 和菓子調進所」について書いてみたいと思います。

www.shooken.com

 

情報が氾濫する現代においても、カステラの製法を熟知している人の数は少ないですよね。おうちでケーキやクッキーを焼く女子はいても、カステラをしょっちゅう作る人なんて、そうそういません。

江戸時代から戦後にかけてはなおさらでした。まさに門外不出の秘伝のようなもの。

そこで、昔は全国の菓子職人がカステラの作り方を学ぼうと長崎を目指し、松翁軒の門を叩いた、と伝わっています。

私も詳しく調べていないので推測に過ぎませんが、江戸時代に江戸、京都、大阪、徳島、秋田、と言った場所で独自のカステラ文化が花開いたのは、松翁軒さんをはじめ、長崎の店舗からしっかりした技術が伝わったため、と見ています。例えば秋田県豆腐カステラは、昨今の尖ったセンスのお店が編み出した奇抜商品ではなく、江戸時代から伝わるれっきとした伝統菓子ですが、カステラの製法をしっかり学んだうえで、風土に沿って独自の発展を遂げたことが見てとれます。

すなわち、松翁軒は長崎に伝わったカステラ製法を全国に伝播させた大功労企業と言えます。しかし、伝えた側の松翁軒にもメリットはありました。

実は、全国から集まった職人は有象無象の集団ではありません。全国の名だたる菓子店の看板を背負ってやってきた、まさに腕利きの職人たち。彼らはカステラづくりを教えてくれたお礼にと、自社の和菓子のレシピを遺していきました。

これは大変な財産です。

しかも、松翁軒が偉かったのは、それらのレシピを丸パクリして大儲けしたりはせず、あくまでカステラや菓子の製法のノウハウとして蓄積していったところにあります。

明治年間に考案され、現在でも多くのファンに愛されている「チョコラーテ」も、こうしたノウハウがフルに活用されて生み出された逸品と言えるでしょう。

f:id:foodtarou:20181212234221j:plain

 

他にも、長い歴史の中で松翁軒さんが作り上げたカステラ以外のお菓子、江戸時代の職人たちの心意気が伝わるような商品はたくさんあります。

例えば、松翁軒さんの浜町アーケード店に行くと、水菓子やジュレ、栗を使った和菓子など、多種多様な商品に巡り合えます。

ただし、それらはこれまで、主役のカステラを引き立てるような役回りだったのですが、2017年の11月、ついに松翁軒本店の近くに「松翁軒 和菓子調進所」なるお店がオープンし、ようやくカステラ以外の松翁軒の逸品たちがスポットライトを浴びることになりました。

f:id:foodtarou:20181224211145j:plain

調進所という名前の響きが良いですね。場所は松翁軒本店の斜め向かい...と言っても分かりにくいでしょうが、有名な眼鏡橋を眺めながら国道の方に歩いたら見つかります。

なお、長崎駅前から路面電車で移動の際は、蛍茶屋ゆきに乗り、市民会館停留場という所で降りたらすぐです。

f:id:foodtarou:20181224215442j:plain

お店に入ると、綺麗なお姉さんの丁寧な接客に迎えられます。店内は明るく広々として、とても清潔。お菓子も見やすく並んでいて、さすがと思いました。

f:id:foodtarou:20181224220120j:plain

まず目に留まったのは、カウンターの美しく上品なお菓子。

f:id:foodtarou:20181224220315j:plain

左側。黄色の、虎柄のような栗どら焼き。

右側。栗きんとん餡の栗まんじゅう。

もはや工芸品のようないでたちです。そして、季節の栗の甘味、上質の餡とが織りなすハーモニーは絶品というしかありません。

f:id:foodtarou:20181224221051j:plain

それとびっくりしたのは、店内の試食コーナーに惜しげもなく、松翁軒じまんのどら焼きが置いてあったことです。

見てください!綺麗に切り分けた美しい焼き色のどら焼き!

びっくりするほ美味しかったので、このどら焼きを買って帰りました。

f:id:foodtarou:20181224221955j:plain

松翁軒さんの紙袋。すごくユニークですね。

さっそくお楽しみのどら焼きを取り出します。

f:id:foodtarou:20181224222107j:plain
f:id:foodtarou:20181224222119j:plain

ちょっと反射がきつくて見づらいでしょうが、大変丁寧な包装で、こだわりのあるどら焼きというお店の想いが伝わってきます。

裏をひっくり返すと、原材料が表示されていました。砂糖・小麦・卵・小麦粉・はちみつ・水飴。ここまではカステラと同じ。

他にみりん、寒天、トレハロース、膨張剤。みりんとは、ちょっと意外ですね。

f:id:foodtarou:20181224222330j:plain
f:id:foodtarou:20181224222335j:plain

いよいよどら焼きを袋から取り出すと、何と透明プラケースが防御していました。とても嬉しい心遣いじゃありませんか。そしてケースをパカッと開けると、こんがりした色合いの、まんまるしたどら焼き様が登場。

f:id:foodtarou:20181224222520j:plain

お世辞でも何でもありません。このどら焼き、めちゃくちゃ美味しいです。

生地は繊細かつ非常にしっかりしているのに、ふんわり食感。また、カステラのような独特の香りが素晴らしく、餡の上品な甘さと抜群の相性です。

まさに、たかがどら焼きと侮るなかれ。江戸時代に全国から馳せ参じた職人たちのいろいろな技術や想いが詰まったような逸品で、ふつうのどら焼きとは毛並みが違う、本物の和菓子です。すごい。

あと、九州住まいの特権ですが、このどら焼きを濃い上質の嬉野茶や八女茶と一緒に頂いたりした日にゃ、極上のティータイムを愉しめますよ、本当に。

というわけで、長崎観光の際は、ぜひ「松翁軒 和菓子調進所」にもどうぞ。