今から飲食店の経営にチャレンジしたい方へ⑤
そもそも決算書って何だろう? - 03.青色決算書を紐解く
さあ、いよいよ青色申告決算書を使って経営のナマの数字を検証していきましょう。
上の画像が青色申告決算書です。これはフェイク決算書ですので、細かいところは不確かな数字が入っていますが、まあそこはお見逃しください。
まず、左上の売上、および仕入れの欄を見ていきます。
①は年間の売上を示します。この決算書の主は飲食業を仮定していますので、③の仕入れは肉、魚、野菜、油、調味料などの食材のことをさします。
では、②の期首商品とは何でしょう?さらに⑤の期末商品とは......。
そもそも決算書は、ある会計期間の収入と支出を記録したものです。個人企業であるならば、途中開業や途中廃業でない限り、会計期間は必ず1月1日~12月31日になります。
食材の仕入れも当然、1月1日~12月31日の間で行われたものが記録されていますが、果たしてそれだけでしょうか。
開業し立てでない限り、店主は前の年の在庫も食材として使っているはずです。
さすがに生肉や刺身は危険ですが、マヨネーズや味の素、乾燥麺などは長期にわたって使いますよね。昨年の4月に買ったものでも普通に活用します。
こうした在庫の引継ぎを、会計上、「期首商品」と言います。
では逆の発想。12月31日時点で使わずに余ってしまった食材があるとします。これは仕入れに含めるか含めないか。
答えは含めません。使わなかったものは仕入れから除かなければならないのです。
この除かなければいけない年末の在庫を「期末商品」と言います。
以上、仕入れてかつ消費した食材(商品)を確定する時には次の式を用います。
期首商品+当期仕入高-期末商品=売上原価
おそらく簿記の授業で見たことがある式だと思います。
すなわち、去年から引き継いだ在庫+今年仕入れた商品が、今年売り物として確保した商品。そこから売れなかった、使わなかった商品を取り除いて金額化したのが「売上原価」なのです。
簡単に言うと、売上原価とは売れた商品に要したコストとなります。
(例)カフェバースズキは、昨年1年間で食材と酒、合わせて404万円で仕入れました。なお、前々年の在庫16万円も引き続き使用し、結果、年末最終営業日に22万円の未使用在庫があることが分かりました。
上記を読み解くに、カフェバースズキが昨年1年間で確保した仕入れ商品のうち、売り物として消費された商品の金額は、
404万円+16万円-22万円で、398万円となります。
では、ここでさらに飛躍。
カフェバースズキのこの年の儲けはいくらでしょう。
それは、①の売上額1070万円から上の計算で得た398万円を引いた672万円が答えです。かなり割のいい商売ですね。
一般的に、672万円のような差引数値のことを粗利益(あらりえき)、売上総利益と呼びます。
売上から食材コストなどの商品仕入れ額を引いて得た利益のことです。
しかし、営業上はコックさんやウエイターさんの給料、調理のための水道光熱費、レストランの家賃なども費用として考えますから、そういった諸々を勘案して利益を導き出さなければなりません。それについては後日述べます。
ここで大事なのは、粗利益をどうやって高めていくかです。
分かりやすく言えば、1杯10円のドリップコーヒーを500円で飲んでもらうことができれば最高じゃないですか。
それは、コーヒーを淹れる店員さんの技術、お店のサービスに対する評価=490円なわけです。
一般に、こうした評価は売上高-仕入の数字で表すのではなく、(売上高-仕入)÷売上高で表します。上の例で言えば、490÷500で0.98、すなわち98パーセントです。
これを粗利益率、売上高総利益率と言います。
同時に、単に仕入÷売上高を原価率と言います。上の例で言えば2パーセントです。
飲食店で言えば、原価率が30%なら優秀。35%ならまあまあ。
※言い換えれば、1000円のランチの材料費が300円(30%)ということです。
ただし最近では、原価率45%とか50%でも好業績を叩きだす業者さんもいらっしゃいます。他の生産性を高めてなるべく美味しい素材をお客さんに食べてもらおうという思考が主流になりつつありますので、このあたりは経営について勉強し、それなりの経験を積まれてからチャレンジするとよいでしょう。
今回は長くなりましたので、この辺で終わります。
次回は、この粗利益率・原価率に的を絞り、美味しいものをいかに安く提供し、かつ儲けるかの戦略についてお話しして参ります。